
2026 インタープロトシリーズ POWERED BY KeePer(IPS)の第3・4戦が9月5日(土)・6日(日)、富士スピードウェイで開催された。
12台の「Kuruma」で争われるジェントルマンレースは、エキスパートクラス4台とジェントルマンクラス8台に分けて争われる。エキスパートクラスには#32 永井秀貴(NETZ NOVEL MIE)、#37 大蔵峰樹(キーパー号)、#44 山口達雄(NAVUL)、#71 大山正芳(ダイワNアキランドIPS)がエントリー。ジェントルマンクラスには#3 FLYING RAT(INGING MOTORSPORT)、#8 中島功(アキランドIPS)、#16 渡邊久和(ララパルーザ)、#27 山﨑哲之(表参道メディカルクリニック)、#55 山川幸夫(人馬一体ドライビングアカデミー)、#61 米谷浩(ヨネタニアキランドIPS)、#88 八木常治(Pastel Motorsport)、#96 末長一範(K-tunes Racing)が顔をそろえた。
前大会では、エキスパートクラスは山口が開幕2連勝。ジェントルマンクラスは山川と末長が1勝ずつを挙げており、第2大会はシーズン後半戦へ向けても重要な2レースとなった。
【公式予選】

9月5日に行われた20分間の公式予選は、直前までの雨によって濡れた路面からスタートした。序盤はウェットタイヤでコースへ向かうドライバーが多かったものの、空には青空ものぞき、周回を重ねるごとにレーシングラインは急速に乾いていく。ウェットタイヤでまずタイムを残すのか、それとも早い段階でスリックタイヤに交換して終盤のアタックに賭けるのか。通常のドライ予選とはまったく異なる判断力が要求されるセッションとなった。
早々にスリックへ交換するドライバーが現れる一方、ウェットタイヤで走り続けたFLYING RATは好タイムをマーク。山川も一時トップに立つなど、ジェントルマンクラス勢がセッション序盤から存在感を見せた。
しかし路面が乾くにつれてスリック勢のペースが上昇。大蔵、大山がセクターベストを更新しながらタイムを縮め、エキスパート勢が上位へ進出していく。
残り時間が少なくなったところで山川がGRコーナーでコースアウトし、セッションは赤旗に。ちょうどスリックタイヤのグリップが本格的に上がり、各車が最後のアタックへ向かおうとしていたタイミングだっただけに、この赤旗が予選結果を大きく左右することになった。永井もスリックへ交換してタイヤを温めている最中で、十分なアタックを行えないままセッションを終えることになる。終的にトップタイムを記録したのは山口。1分58秒241をマークして総合トップに立ち、大蔵が0.654秒差の1分58秒895、大山が1分59秒223で続いた。山口は第3戦、第4戦ともにポールポジションを獲得することになった。
ジェントルマンクラスでは、難しいコンディションの中でウェットタイヤを生かしたFLYING RATが2分00秒334でクラストップ。山川が2分00秒999で続き、米谷がクラス3番手となった。一方で永井はインタープロト総合で9番手、末長も10番手と、決勝では速さを持つドライバーたちが後方から追い上げるという興味深いグリッドが形成された。
Driver’s Voice
#44 山口達雄(NAVUL)
エキスパートクラス予選トップタイム

「ウェットで行くか、スリックで行くか。エンジニアや山下選手といろいろ話して悩んだのですが、最終的には大蔵選手がスリックだというのを聞いて、もう合わせるしかないと。とはいえ、たとえば100Rとかはまだ結構濡れていましたし、序盤は耐えるのがきつかったですね。ちょっとでも気を抜くと滑ってしまうし、アクセルの入れ方は意識しました。少しずつコンディションが回復してドライパッチも若干見えてきたので、そこに載るようにと進めました。今回の決勝もみんなでバチバチの戦いになると思いますが、何とか今回も勝てたらいいですね」
#3 FLYING RA T(INGING MOTORSPORT)
ジェントルマンクラス予選トップタイム
「パートナードライバーの卜部選手やエンジニアと話して、路面状況の回復を待とうということになり、セッションの序盤はピットで待機する戦略を選びました。スリックタイヤで出ていくのは私にはちょっと厳しいかもしれないと考えて、ウェットタイヤで出ていったのですが、先行車に引っかかってしまったりして、実はしっかりとアタックできたラップのタイムではないんです。おそらく、赤旗が出た周がベストラップだったと思うので、そのタイムを見たかったなぁという思いはありますね。決勝は手堅く、セーフティファーストで行きたいですね。もちろんできるだけ前を目指したいと思います」
【第3戦決勝】

9月5日午後に行われた第3戦決勝。スタート時の気温は22.8度、路面温度27.3度。雨こそ上がっていたものの、場所によっては濡れた部分も残る難しい路面状況だった。
ポールポジションには山口、2番手大蔵、3番手大山、4番手FLYING RAT。後方には永井、末長と、本来上位争いに加わる速さを持つドライバーが並んだ。
ローリングスタートが切られると、山口がトップを守り、大蔵、大山、FLYING RATが続く。後方ではスタート直後からポジション争いが激しく、永井と末長がともにポジションアップ。中島も米谷をかわして総合5番手へ浮上した。
前方では山口が安定したペースを刻む。大蔵も食らいついたが、山口は特にテクニカルな第3セクターで速さを発揮し、徐々にリードを拡大していった。山口自身もレース後、「ストレートでは最高速で3km/hぐらい差がある」と振り返った一方、マシンを第3セクターに合わせたセットアップとし、100Rを含むコーナー区間でタイムを稼ぐことを意識していたという。その狙い通り、レース中盤以降は大蔵との差を築き、トップ争いを自らコントロールしていった。

一方、総合11番手、ジェントルマンクラスクラス6番手からのスタートとなった末長は驚異的なペースで追い上げ、7周目には1分47秒921と、このレースの全体ファステストラップを叩き出す。エキスパートクラス勢にも匹敵する速さで前方へ迫り、中島やFLYING RAT、大山らを巻き込んで総合3番手を巡る争いが激しさを増していった。
さらに総合9番手スタートの永井も着実にポジションを上げていく。予選では十分なアタックができなかったことで後方Gridとなったが、レースでは一台ずつ攻略。中盤以降は大山、FLYING RAT、末長らの集団に加わった。FLYING RATは大山に並びかけ一旦は総合3番手へ浮上するも、直後に痛恨のスピンで後退。このアクシデントをすり抜けた永井が大山もとらえて総合3番手へ浮上した。大山も最後までポジション奪回を狙い、さらにその後方の末長、中島、さらに山川までが接近。クラスを越えた一団が、レース終盤の主役となった。
後方の激戦を尻目に、先頭では山口が危なげなく最終コーナーを立ち上がりトップチェッカー。開幕から続く好調をそのまま結果につなげ、第3戦を制し、3連勝を飾った。2位は大蔵。後方から追い上げた永井が3位に入り、エキスパートクラスの表彰台を完成させた。
ジェントルマンクラスでは、圧倒的なレースペースを披露した末長が優勝。中島が2位、山川が3位に入り、ランキング上位を争うドライバーたちが揃ってポイントを持ち帰った。
Driver’s Voice
#44 山口達雄(NAVUL)
エキスパートクラス優勝

「とにかく後ろを気にせず逃げることだけを考えていました。うちのクルマはストレートが少し遅く、最高速で3km/hぐらい差があるので、その分セクター3でしっかり稼ぐことを意識しました。100Rも自信を持って走れるクルマになっていましたし、今日は本当に調子が良かったです。今週はドライでほとんど走れていなかったので、ここまで仕上げてくれたメカニックには感謝しています」
#37 大蔵峰樹(キーパー号)
エキスパートクラス2位

「ドライのセットアップがまだ決まっておらず、100Rを走った時点で『今日は厳しいな』と思いました。それでも何があるか分からないので、山口さんについていくしかないと思って走りました。もう少し近づかないとプレッシャーにもならないですね。明日はもう、ザーザー降りの雨を期待しています(笑)」
#32 永井秀貴(NETZ NOVEL MIE)
エキスパートクラス3位

「予選ではウェットタイヤで出て、『これはスリックだ』と思ってすぐ戻ったのですが、タイヤを温めているところで赤旗になってしまいました。後ろからだと本当に簡単には抜けません。ジェントルマンクラスの皆さんも速く、少しずつ詰めて最後に抜けるかどうかという差なので、追い上げるのは難しかったです。ただ、接触なくフェアにバトルできたのでレース自体は楽しめました」
#96 末長一範(K-tunes Racing)
ジェントルマンクラス優勝

「予選は、スリックに替えてこれからアタックというタイミングで赤旗になってしまいました。後ろからのスタートでどうなるかと思いましたが、スタートが良かったですね。明日もしっかり連続していい結果を残せるように頑張ります」
第4戦決勝

一夜明けた9月6日、富士スピードウェイは前日とは一変した。第4戦のスタートを前に雨脚は強まり、気温21.5度、路面温度21.7度。コース上には大量の水が残り、視界も厳しい完全なウェットコンディションとなった。
ポールポジションは再び山口。大蔵、大山、ジェントルマンクラスポールのFLYING RAT、米谷、渡邊久和(ララパルーザ)と続く。エキスパートクラス4番手の永井は総合で7番グリッドからのスタートだ。安全を考慮してレースはセーフティカー(SC)先導で開始。雨量と路面状況を確認しながら周回を重ね、各ドライバーはタイヤとブレーキに熱を入れて本格的なスタートを待った。
SCのライトが消え、残り15分を切ったところでいよいよレーシングスピードへ。山口が加速を開始すると、その背後には大蔵がピタリとつける。大量のウォータースプレーで視界が奪われる中でも大蔵は勝負をためらわず、山口とサイド・バイ・サイドの攻防を展開。前日のレースではマシンのコーナリングに苦しんだ大蔵だったが、レインコンディションではブレーキングの強さを最大限に生かし、一連の攻防を制してトップへ浮上した。
レース後、大蔵は「始まってしまえば抜く要素が少ないので、スタートで抜いておこうと思っていた」と明かしている。ドライ走行の段階からパートナーの牧野任祐とブレーキの良さを確認しており、その武器を最も重要な局面で使った形だった。

後方では永井が猛烈な追い上げを開始する。渡邊、米谷らを次々と攻略して5番手まで浮上すると、前方の大山、FLYING RATにも迫っていく。ウェットを得意とする永井は上位勢を上回るラップタイムを記録し、一時3秒以上あった大山との差を周回ごとに削り取っていった。
一方、4番手を走っていたFLYING RATはダンロップコーナー立ち上がりでスピン。その後ピットへ入り、上位争いから姿を消すことになり、大蔵、山口、大山、永井のエキスパート勢が総合トップ4に。大蔵は一時山口との差を2秒近くまで広げたものの、終盤に向けて山口が再び接近していく。ジェントルマンクラスでは中島が山崎哲之(表参道メディカルクリニック)、米谷を捕えてトップに立ったが、その背後から末長が猛烈に追い上げてきた。
残り5分あまりの段階で末長は総合6番手まで浮上し、中島との距離を急速に縮める。前日の第3戦で全体ファステストを記録した末長の速さはウェットでも健在だったが、中島もペースを上げて応戦し、クラス首位を譲らない。その後方では米谷と山川も表彰台圏を争い、ジェントルマンクラスは最後まで一瞬も気を抜けない展開となった。
終盤、総合3番手の大山に永井が完全に追いついた。強烈なウォータースプレーで前方がほとんど見えない状況の中、永井はブレーキングポイントを探りながら大山に仕掛ける。軽い接触を伴うほどの激しい攻防となったが、大山が最後まで粘り切り、3位の座を守った。
そしてファイナルラップを迎えるころ、トップ争いも再び動き出す。それまで大蔵が築いていたリードを山口が一気に縮め、2台は再びテール・トゥ・ノーズに。山口はアドバンコーナー、ダンロップコーナーとブレーキングでプレッシャーをかけ続けるが、大蔵もミスを犯さない。
最終セクターでも山口が背後に迫ったものの、最後の一手を打つまでには至らず。大蔵がそのまま最終コーナーを立ち上がり、第4戦のトップチェッカーを受けた。

前日のドライでは山口に及ばなかった大蔵だが、このレースでは雨の中で自らの強みを生かして雪辱。山口が僅差の2位、永井との激戦を制した大山が3位となった。
ジェントルマンクラスは中島が末長の猛追を最後まで抑え切り優勝。第3戦2位からさらにひとつ順位を上げ、今季初勝利を手にした。2位は末長、3位には米谷が入り、最後まで追い上げた山川は表彰台まであと一歩の4位となった。
第2大会を迎える時点で、山川をわずか1ポイント差で追っていた中島は、第3戦2位、第4戦優勝と2日間を通して安定した結果を残し、堂々のランキングトップに浮上。シーズン終盤に向けてタイトル争いでも大きな意味を持つ週末となった。
Driver’s Voice
#37 大蔵峰樹(キーパー号)
エキスパートクラス優勝

「レースが始まってしまうと抜く要素があまりないと思っていたので、スタートで抜いておこうと思っていました。クルマはブレーキだけは良くて、ドライの同乗走行でも牧野選手と『そこを使おう』と話していたんです。雨なら前に出てしまえば何とかなると思っていました。今週はずっとクルマが曲がらなくて昨日は本当にきつかったですが、雨なら乗り方やライン取りで補える部分もあるので、同じようなペースで走れました」
#44 山口達雄(NAVUL)
エキスパートクラス2位

「雨はたぶん得意じゃないですね(笑)。前にいたので視界は良かったですが、逆にどこでブレーキを踏めばいいのか分からないところもありました。もちろん大蔵さんには抵抗しましたし、前半はなるべく抑えて後半に勝負しようと思っていました。最後はもう少し詰められる感触もありましたが、それ以上行くと接触する可能性もあります。チャンピオンシップを考えるとポイントをゼロにするのは避けたかったので、最小限に収められたと思います」
#71 大山正芳(ダイワNアキランドIPS)
エキスパートクラス3位

「難しい雨でしたが、スタートは良かったです。ただ永井さんがすごい勢いで追い上げてくるだろうとは思っていました。実際、最後の最後で追いつかれて、アドバンコーナーでは前に出られましたが、そこからダンロップコーナーまでずっと並んで走りました。少し接触もありましたが、なんとか最後まで走り切ることができました」
#8 中島功(アキランドIPS)
ジェントルマンクラス優勝

「雨はちょっと好きなんですが、インタープロトはまだクルマの動きもよく分かっていない手探りの状態でした。クラス5番手から追い上げることはできましたが、もう少し前にいた別クラスの3台も追いかけたかったですね。富士はF4やFJでも走ったことがありますし、得意というほどではないですが、ぼちぼち走れているかなと思います。とりあえず優勝できて良かったです」